死亡退職金と相続
社員が死亡したときは当然に退職となりますから、退職に関する規定がある場合はその規定に基づき退職金を支払うことになります。死亡退職金は、就業規則(退職金規程)等で定められている場合はそれに従い、民法上の相続人に支払います。退職金規程等で誰に支払うかについての定めは、労働基準法施行規則の遺族補償の順位や民法の遺産相続人の順位どおりでなくても構いません。会社が任意に定める支給順位に基づいて支払って差し支えありません。
退職金は民法上では相続対象の財産なのに、なぜ退職金規定で支払い先が決められるかというと、遺族の財産争いが起きた場合に、最悪の場合その争いが決着するまでの間、会社はその退職金を預かっておかなくてはならなくなるからです。
しかしそれでも遺族の間で争いが起きて、訴訟事件になるなど係争が長引きそうな場合は、実務上の処理として供託などの措置を講じます。そうすれば、死亡退職金を会社がいつまでも管理する必要もなくなります。
ところで、就業規則等で支給対象者を例えば「妻」と定めた場合には、受給権者たる妻は、遺産相続人としてではなく、直接これを自己固有の権利として取得することになります。つまり支払対象者を「妻」と定めているときは、その死亡労働者に妻がなくとも、たとえ民法上の相続人(例えば兄弟姉妹)が存在していても、その相続人は、死亡退職金の受給権を持つことはできません。
もちろんこれは支払対象者についての定めがある場合のみで、定めがない場合は「民法の一般原則による遺産相続人に支払う」とされています。
ちなみに、受取人が誰であったとしても、死後3年以内に支給が確定した死亡退職金はみなし相続財産として扱われ、相続税の課税対象となります。