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不動産鑑定士 大武 克己

兼務役員は労働保険に加入できるのか

 法人の役員は労働者ではないため、原則として労働保険に加入す
ることができません。しかし、法人登記上は役員であっても、賃金
額や勤怠管理などの実態からみて労働者性が強い場合、一定の要件
を満たしていれば、例外的に労働保険に加入することができます。
このような役員のことを、労働者と役員を兼務しているという意味
合いから「兼務役員」といいますが、今回は、兼務役員と認められ
る要件と労働保険加入のための手続きについて取り上げたいと思い
ます。

 

 まずは兼務役員と認められる要件について見ていきましょう。法
令に明確な定めはありませんが、通達等の行政解釈によると、一般
的に以下の要件を満たしていることが求められています。こうした
要件に基づき、実態が労働者に該当するか否かについて総合的に判
断されることとなります。

 

1)代表取締役・監査役でないこと
2)代表権や業務執行権を有していないこと
3)業務執行権を有する役員の指揮命令を受け、通常の労働者と同様
 の労働条件で労務を提供し、その労働の対償として賃金を受けて
 いること
4)賃金と役員報酬の両方を受ける場合、賃金が役員報酬を上回って
 いること

 

 次に加入手続きについてですが、労災保険は事前の手続きは必要
ありません。これに対して雇用保険は、事前に兼務役員の認定を受
ける申請が必要となります。具体的には「兼務役員雇用実態証明書」
に登記簿謄本・定款・取締役会議事録・就業規則・賃金台帳等を添
付して、事業所所在地を管轄するハローワークへ提出します。そこ
で報酬や勤怠管理、指揮命令の有無といった観点から、労働者と同
等の待遇を受けているかどうかが総合的に判断されることとなりま
す。

 

 なお、兼務役員が負担する雇用保険料は、役員報酬を除いた賃金
部分にのみ雇用保険料率を乗じて計算するため、給与計算の際には
注意が必要です。また、この賃金部分については、労働保険の年度
更新の際に労働保険の対象となるため、忘れずに賃金総額に含める
ようにしなくてはなりません。

 

[関連通達等]
昭和34年1月26日 基発48号
1.法人の取締役、理事、無限責任社員等の地位にある者であって
も、法令、定款等の規定に基づいて業務執行権を有すると認められ
る者以外の者で、事実上、業務執行権を有する取締役、理事、代表
社員等の指揮、監督を受けて労働に従事し、その対償として賃金を
受けている者は、原則として労働者として扱うこと。
2.法令または定款の規定によっては業務執行権を有しないと認め
られる取締役であっても、取締役会規則その他内部規定によって業
務執行権を有する者がある場合には、保険加入者からの申請により、
調査を行い事実を確認したうえでこれを除外すること。この場合の
申請は文書を提出させるものとすること。
3.監査役および監事は、法令上使用人を兼ねることを得ないもの
とされているが、事実上一般の労働者と同様に賃金を得て労働に従
事している場合には、労働者として扱うこと。
4.徴収法11条2項の賃金総額には、取締役、理事、無限責任社員、
監査役、監事等(以下「重役」という) に支払われる給与のうち、
法人の機関としての職務に対する報酬を除き、一般の労働者と同一
の条件の下に支払われる賃金のみを加えること。
5.労働者として取り扱われる重役であっても、法人の機関構成員
としての職務遂行中に生じた災害は保険給付の対象としないこと。

 

行政手引20358
1.株式会社の取締役は、原則として、被保険者としない。取締役
であって同時に会社の部長、支店長、工場長等従業員としての身分
を有する者は、報酬支払等の面からみて労働者的性格の強い者であ
って、雇用関係があると認められるものに限り被保険者となる。
2.代表取締役は被保険者とならない。
3.監査役については、商法上従業員との兼業禁止の規定があるの
で、被保険者とならない。ただし、名目的に監査役に就任している
に過ぎず、常態的に従業員として事業主との間に明確な雇用関係が
あると認められる場合はこの限りでない。
4.合名会社、合資会社の社員は株式会社の取締役と同様に取り扱
い、代表社員は被保険者とならない。

 

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