不動産の名義書換と農地法の許可の関係について
▼農地を売買する場合の注意点。
皆さんは、農地を譲り受けた際には農地法の許可が必要であることをご存じでしょうか?
農地(田・畑・牧草地)を他人に譲渡したり宅地に転用したりする場合には、国の農業政策を保護する観点から、農業委員会・都道府県知事から許可をもらう必要があります。
それらの許可が無い売買契約は効力が発生しません。
また、それらの許可を得ずに農地を譲り渡してしまった場合には、罰則があります(3年以下の懲役又は300万円以下の罰金)
▼農地法の許可が不要な場合
原則は農地法の許可が必要ですが、中には不要な場合もあります。
代表的なのは相続による移転の場合と、時効取得による移転の場合です。
相続による移転とは、農地の所有者が死亡して、その相続人が農地を引き継ぐような場合です。
時効取得による移転とは、他人の土地について善意で10年間、悪意でも20年間、それぞれ平穏に所有者であるような状態を継続させることによってその所有権を取得してしまうような場合です。
▼相続による農地の取得についての注意点
上記のように、相続を登記原因とする場合には、その名義書換において農地法の許可書を添付する必要はありません。
しかし、注意すべきなのは、農地を相続によって取得した場合、農業委員会への届け出が必要だということです。権利を取得したことを知った時点から10ヶ月以内に市町村の農業委員会に届け出をしなければなりません。
▼時効取得による農地の取得についての注意点
農地の名義変更のためには、農業委員会の許可という厳しいハードルがあります。
かつては農業委員会の許可が不要とされる「時効取得」を原因とした名義書換が横行したことがあったということです。
そこで法務省は昭和52年8月25日の通達によって、
登記官は、時効取得を原因とする農地の所有権移転登記が申請された場合には、農業委員会にその旨を通知することになりました。
また、司法書士が申請代理人になっている場合には、登記官は司法書士に対して事実関係を調査するようになっているようです。
よって、「時効取得」を登記原因とする際には、よくよく事実関係を確認してから登記申請をする必要があります。