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社会保険労務士 栗林 隆

失踪して連絡の取れない社員を懲戒解雇できるか?

 たまに相談を受けるケースで、事前に想定しておかなかったため

に困ってしまう事例がいくつかありますが、その中の一つ「失踪し

て連絡の取れない社員を懲戒解雇できるか?」について考えてみた

いと思います。

 

 そもそも社員を懲戒解雇するためには、就業規則またはこれに準

ずるものにおいて懲戒の種類と事由を明記し、周知説明しておく必

要があります。就業規則の懲戒解雇の規定に「正当な理由なく無断

欠勤が14日以上続いたとき」といった定めがしてあることが多いで

すが、そもそも懲戒解雇はその意思表示を本人に対して行うことに

より成立します。

 

 ここで問題になるのが、失踪して連絡の取れない社員の取り扱い

です。本人と連絡が取れない状態にある以上、解雇の意思表示をす

ることは困難です。このような場合には民法第98条の公示送達とい

う方法によって、懲戒解雇の意思表示を行うことになります。公示

送達は従業員の最後の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立てをし、

裁判所の掲示板に掲示するほか、官報や新聞に少なくとも1回掲載

することによって行われます。この掲示から2週間を経過した時点

で、相手方に意思表示が到達したとみなされることとされ、懲戒解

雇が成立することになります。

 

 以上が本来とるべき法律上の手続きではありますが、アルバイト

などを多く雇用している企業においては、何の連絡もなく出社しな

くなる従業員が発生する度に、そのような手続きを取るというのは

現実的ではありません。よって近年は就業規則や労働契約の中に、

「会社からの出社の督促にも関わらず、一定期間以上の無断欠勤を

行った際には退職とする」という条項を設ける例が増えています。

一定期間を何日に設定するかどうかについては、諸説ありますので

ここでは、特定は避けますが、就業規則に前もってこの一文を明記

しておくことで、いわゆる失踪者対応のルール化が可能になります。

 

 なお、懲戒解雇の場合でも労働基準監督署長による解雇予告の除

外認定を受けない限り、解雇予告もしくは解雇予告手当の支払いが

必要になります。解雇予告除外認定は「労働者の責に帰すべき事由」

があれば認められる可能性はありますが、これには時間と手間がか

かり、懲戒解雇事由が必ずしも認定されるとは限らないため、注意

が必要です。

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