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弁護士 小山 明輝

相続法ここが変わった!~配偶者居住権~弁護士小山明輝のブログ(5)

1.改正相続法が成立しました!

 5月10日のブログで,いわゆる相続法の改正について触れました。

 その後7月6日,参議院本会議で法律案が可決され,同日,改正相続法が成立しました(同月13日公布)。

 今回は,改正相続法のうち「配偶者(夫婦の一方)居住権」について紹介したいと思います。

※ ただし,現時点(2018年(平成30年)9月18日時点)では,この法律は施行されていないのでご注意を!

2.「配偶者居住権」って,何?

(1)夫婦で住んでいた自宅不動産も,相続財産として「遺産分割」の対象となるのが原則です。

 しかし,そうすると,夫婦の一方が亡くなった後,親子間で相続に関する争いが発生した場合,

遺された夫又は妻が「引続き自宅に住み続ける権利」(居住権)は,必ずしも保障されていませんでした。

(2)例えば,従前は,

① 自宅不動産が夫の単独名義の場合で,

② 当該夫が亡くなったとき,

③ 妻も夫とともに当該不動産に住んでいれば,

④ 夫が妻に対し,当該自宅不動産を「無償で貸した」(使用貸借契約が成立していた)

ものと「推認」されるという解釈がなされていました(最高裁判所判例平成8年12月17日)。

(3)しかし,それでは,

   ・第三者に当該不動産が遺贈(遺言により贈与すること)されてしまった場合や

   ・被相続人(本件では夫)が「反対の意思を表示した」場合,

このような「推認」が働かず,遺された妻が自宅に住み続けられる保障がなくなってしまいます。

(3)そこで,今回の改正では,

① 夫婦(配偶者)の一方が所有する自宅不動産に夫婦で住んでいる場合で,

② 所有者である一方配偶者が亡くなったとき,

③ 亡くなった裵愚者の意思にかかわらず,

④ 一定期間,遺された他方配偶者がその不動産に住むことができる権利,

を正面から定めました。これが,「配偶者居住権」です。

3.「配偶者居住権」の設定方法

(1)配偶者「短期」居住権

 相続開始(一方配偶者が亡くなった)後,最低6か月間(法律上,期間のカウント開始時点は幾つかあります),

遺された配偶者が自宅不動産に無償で住み続けることができる権利です。

 最低6か月という限られた期間ではありますが,

① 自宅不動産を所有する配偶者が亡くなったとき,

② 遺された配偶者も当該自宅に住んでいた場合,

という以上に,特段の要件はありません。

(2)配偶者居住権

 終身又は一定期間,遺された配偶者が自宅不動産に住み続けることができる権利です。

 遺された配偶者に「終身」など長期間の居住権を認めることになるので,他の相続人などに与える影響が大きく

設定にはいくつかの要件があります。

 具体的には,

① 自宅不動産を所有する配偶者が亡くなったとき,

② 遺された配偶者も当該自宅に住んでいた場合,

のほか,

③-A 亡くなった相続人の遺言(遺贈)若しくは,

③-B 遺産分割(協議,審判)による

というものです。

 なお,配偶者居住権は登記をすることで,その後自宅不動産を取得した第三者にも権利主張(対抗)が可能です。

4.ここに注目!~「配偶者居住権」のメリット~

(1)ところで,

「わざわざ『配偶者居住権』を設定しなくても,遺された配偶者に自宅不動産を相続させるよう遺言

すれば良いのでは」

という疑問を抱くことがあるかもしれません。

(2)しかし,先に述べたとおり,「配偶者居住権」は,仮に亡くなった配偶者の遺言がなくても

設定が可能です(遺言がある方が,争いを未然に防ぐ意味で良いとは思います。)。

(3)また,「配偶者居住権」を設定した場合,自宅不動産そのものを相続するよりも,相続する

経済的価値が低くなる結果(詳細は省きます),その分,遺された配偶者が別の相続財産(預貯金等)を

取得することが可能となります。

 これは,例えば遺産分割で「法定相続分」どおりに分割する場合に有益です。

5.まとめ

 「配偶者居住権」一つをみても分かるとおり,今回の相続法改正は,これまでの相続を大きく様変わり

させるものが含まれています。

 そこで,既に遺言を作成された方も,この法律が施行された後,今一度,遺言の内容を再検討されることを

お勧めします。

(弁護士 小山 明輝)

 

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