「立ち止まって自分を顧みる」
ご挨拶代わりに・・・ちょっと考えさせられる名文を引用したいと思います。
少々長文ですが、最後までお付き合いください。
『企画の手順(ビジュアルに進める「黄金の4ステップ」』(中村信夫著 日本能率協会マネジメントセンター)より引用。
( )内は私が加筆しました。
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「ある農夫の一日より学ぶ」
ある農夫が朝起きて家の近くの畠に出て耕運機を動かそうとしたら、油がなくなっているのに気付きポリ容器を持って油を買いに出かけた。(仕事その1)
たまたま庭の豚小屋の前を通りかかったたら豚の餌がなく豚がブーブー鳴いていたので、いつも餌にまぜてやるジャガイモを取りに倉庫に行った。(仕事その2)
するとジャガイモ全部に芽が出ていた。芽が大きくなると食べられなくなるので大急ぎでそれをみんな摘んだ。(仕事その3)
そしてジャガイモを必要な分だけ袋に入れ肩にかついで豚小屋に向かった。(仕事その2の続き)
その途中薪小屋の前を通りかかると薪がくずれて外に出ていた。
雨に当たると具合が悪いので小屋に入って整頓した。(仕事その4)
その時、今晩暖炉にたく薪が家にないのに気付いて一把こわきに抱えた。(余計な仕事)
そして豚小屋のほうに歩いているとニワトリ小屋の前にニワトリが一羽出ていた。
これを汗をかきながら追いかけ回して、やっとつかまえてニワトリ小屋に押し込んだ。(仕事その5)
そうして豚に餌をやって、やれやれという気持ちで油買いに出かけ、畠のそばの家の近くまで帰ってきた時は、すでに日は暮れていた。
(その日で一番大事な耕運機の仕事は出来なかった)
―中略―
この農夫のその日の仕事は、耕運機を動かす仕事を含めて五つだ。
何が大事かといえば耕運機を動かすことだ。
そうしないと種まきが遅れ、その結果、収穫期が寒い時期になると、思うように収穫が得られないことになる。
したがって豚やニワトリは後回しにしてでも、まず油を買ってきて耕運機を動かすことだ。
五つの仕事のうち一つだから20%だ。
それさえすれば、あとのことはできなくても、その日の自分の農家に対する貢献の80%は果たしたことになる。
その知恵のないこの農夫には企画力・計画力がないと言わざるを得ないことになる。】
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忙しいときというのは、目の前に次々と仕事が現れてきて、それを処理していくだけで、一日が終わってしまいます。
そして「自分は、今日も何をしていたんだろう」といった一種の虚しさを感じることはありませんか?
その一日が、一週間となり一ヶ月そして一年となります。
そして、歳を重ねるにつれ、自分の一生ははたしてこのままで良いのか?と・・・。
私は、この逸話を読んでから、バタバタしている自分を感じたとききは、「農夫の一日」「農夫の一日」とつぶやいて、一旦、自分を客観視するようにしています。
さらに、私の事務所でも、この「農夫の一日」が一つの合言葉になっています。
事務所の中でこのフレーズが飛び交うときは、「おっ!自分を客観視してるな!」と、
事務所の一人ひとりの心理状況が、よくわかりますし、良い意味で安心感を与え合っているみたいです。
「農夫の一日」の合言葉で、仕事の優先順位が見えてきて、ミスも少し減ったみたいです。